東大寺三月堂執金剛神(奈良市) 東京芸大模刻像より
東京芸大において東大寺執金剛神像模刻像が公開されました。これは、同大の薮内佐斗司 先生の退官記念の一環です。模刻は、当然、現在の一流の技術により完全に本物を再現されています。しかも、現状の模刻像と完成直後の美しい色彩を想像した模刻像の二つを同時に見ることができます。とても感動できる企画でした。
<画像の説明>東大寺三月堂執金剛神(模刻像) 画像左:現状 画像右:完成時の復元
私は何度も東大寺にはお参りさせて戴いていますが、執金剛神像の現物を拝ませて戴いたことはありません。この像は、通常秘仏で年に一回御開帳(開帳は12月16日です)されますが、東京からはなかなかスケジュールが合いません。コロナ禍で御開帳はどうなったのでしょうか、私は現状を存じません。
そもそも執金剛神像は、本尊の不空羂索観音の真後ろに祀られており、しかも、本尊とは背中合わせに祀られています。現物を見るのも難しいでしょうが、御開帳の日に見ることができたとしても、今回の展示会ほどは、絶対に身近に拝ませて戴くことはできないでしょう。
<画像の説明>東大寺三月堂執金剛神(模刻像)
この像に関してですが、東大寺の前身金鍾寺に関連した文献にはこの像の記述があり、当初から法華堂の秘仏でした。憤怒の表情、筋肉等の躍動感のある表現等、天平文化の典型的な技法を示します。塑像ですが、殆ど作成当時の形、色彩を残します。
執金剛神が祀られる三月堂(法華堂)ですが、天平年間の建物でもちろん国宝です。創建時には双堂(ならびどう)の形式だったと考えられています。鎌倉時代に2棟を合体して1棟にしましたので、左右対称ではありません。三月堂は、東大寺では、一般の観光客が訪れる南大門や大仏殿とはちょっと離れた場所にありますので、以前は比較的静かな場所でした。
鹿もこの辺りではあまり見かけません。
<画像の説明>画像左:東大寺三月堂 画像右:東大寺三月堂仏像の内部配置図
三月堂内部には、本来の安置場所が焼失した等の理由により、言葉は悪いですが雑多な仏像が集められています。本尊の不空羂索観音や今回のテーマの執金剛神をはじめ、12体の国宝と4体の重要文化財計16体の仏像が安置されます。これほどの国宝、重文が一堂に集められている光景は、なかなか拝観させて戴けることはありません。
東大寺三月堂本尊の不空羂索観音に関しては以前にも取り上げたことがあります。
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