薬師寺聖観音菩薩立像(奈良市)

 薬師寺は近年ずうっと工事中です。以前は東塔だけが目立っていましたが、今は、西塔、金堂そして講堂が再建されて存在感を発揮しています。薬師寺建立直後は、このような朱色の眩い建物だったと想像できます。最新の堂宇は、暫く時間が経過すると、彩色にも古色がでて、渋い建物になっているのではないでしょうか。


<画像の説明>画像左または下:薬師寺西塔 画像右または上:薬師寺金堂 いずれも平成の再建

 

 高田好胤氏ならではの剛腕でこれらの再建も可能になったのでしょうが、再建なった建造物には、それぞれ個別に入場料が必要になりました。一寸凝った入場券になっており、建物毎に入口で四方のとんがりを1枚ずつ切り取ってもらうようになっています(*1)。

 

 今再建は終わりましたが、今度は従来からあった東塔が、修復のため薦を被っています。この薦が取れる時が楽しみです。東塔、西塔、金堂そして講堂を、一堂に見ることができれば壮観です。

 

<画像の説明>解体修理中の薬師寺東塔


 ところで、本尊の薬師如三尊像は、建立年代がプロの先生方の間では議論になります。私レベルが言うことではないのですが、一寸説明させて戴きます。

 薬師寺は、藤原京に建立され、その後平城京に移設されたとされます。しかし、近年の発掘では、薬師寺は移設されたのではなく平城京で新たに建立され、藤原京・平城京で2寺併存し、藤原京の薬師寺は本薬師寺と称されたことが分かってきました。

 現薬師寺の本尊の薬師三尊像は、藤原京で造像され移設されたか、平城京で造像されたかが、長く議論されていますが、上記のように2寺併存が分かってきますと、平城京造像派が、有利になってきました。現存の薬師三尊像が、白鳳仏(飛鳥時代後期)では無く、天平仏ということを強く示唆しており、仏像史においてはとても重要となります(*2)。

 今回は、その議論の中で良く議論される、東院堂の聖観音菩薩立像について取り上げさせて戴きます。当聖観音菩薩立像と金堂三尊像の月光菩薩は、像容が良く似ています。なお、聖観音菩薩立像の模造品が東京国立博物館にあります。

 

 

<画像の説明>画像左または下:薬師寺聖観音菩薩立像(模造)
               本画像は、東京国立博物館提供のコンテンツです。
              「東京国立博物館提供画像加工(C-1830)」
               [http://webarchives.tnm.jp/imgsearch/show/C0098344](*3)
       画像右または上:薬師寺月光菩薩(望遠レンズにて外部より撮影)


 聖観音菩薩立像では、腰から足首にかけて裾が下方に垂れています。本尊の月光菩薩は裾が後ろにたなびかず、横に広がっています。月光菩薩は、腰をくねる変化を見せますが、聖観音菩薩は、天平仏の様に胸飾り等の華やかさがある一方、飛鳥仏と同じく、正面観、全体的に左右対称な像容を持ちます。

 側面観をもち左右非対称の月光菩薩より、東院堂聖観音菩薩立像は古いと言えます。つまり、時代的には、下記流れとなります。

白鳳仏➡東院堂聖観音菩薩立像➡月光菩薩➡天平仏


 西の京駅をでて、左に行けば唐招提寺、右に行けば薬師寺です。ほとんど隣り合わせの2寺ですが、一方は、平成の時代に多くの堂宇を再建し、一方は、昔ながらの寺様を維持しています。今後の両寺の継続と発展は楽しみです。


(*1)
薬師寺の特別入場券。1角、西塔特別拝観権を記念に残しました。


(*2)
奈良国立博物館において、2015年に実施された白鳳展では、薬師寺の薬師如来立像が、紹介されていました。ここでは、薬師如来が白鳳仏として紹介されていました。

 

(*3)本画像は、クルムとアルク 中山良氏より情報提供戴きました。。
    中山さんありがとうございました。

2018年08月19日