興福寺中金堂(奈良市)

 中金堂が落慶法要はこの秋に執り行われるそうですが、この春から一般公開が始まりました。
 中金堂の復元は、興福寺の寺域を私たち一般人に明確に示してくれました。今までは、奈良公園のなかに興福寺の様々なモニュメントが散らばっているような印象を受けていましたが、今回の中金堂の建立で興福寺としてまとまりがでてきました。
 今回中金堂回廊が発掘調査により復元されたため、創建当時の伽藍配置も良くわかるようになってきました。中金堂から見て、回廊の外左手に五重塔が見えることから、四天王寺式のような左右対称ではないし、法隆寺のように塔が回廊内にあるタイプでもありません。興福寺は、平城京で最初に建立された寺院です。まさに奈良時代当時としては最新の伽藍が展開されています。

画像の説明:興福寺中金堂 

 

画像の説明:画像左又は下:興福寺中金堂回廊内から見た五重塔
      画像右又は上:興福寺中金堂回廊内から見た南円堂

 中金堂は、創建当初の伽藍配置や建物の規模・形式を守り続けています。創建当初の礎石66個のうち2個が後世取り換えられただけで、今回の再建も創建当時の礎石を殆どそのまま使用しているそうです。興福寺では、現在国宝になっている東金堂(室町時代の再建)、五重塔(室町時代の再建)、北円堂(鎌倉時代の再建)も同じ場所に同じ規模で再建されています。


 しかし、建立には時代の最新のテクノロジーを使用しています。鎌倉時代は鎌倉時代の、室町時代は室町時代の象徴的な和様建築です。
 中金堂は、復興建立にあたっては、中金堂自体が貴重な文化財になりますし、内部は、貴重な文化財を祀る施設となるため、再建にあたっては、ハンディキャップ対応も必須ですし、数々の近代的な防災施設も必要です。中金堂は、その様な点が考慮、新旧のバランスが実に良いと思います。再建にあたって、木を使うことだけに執着し、良しとしてしまうどこかの市長とは違います。
 興福寺中金堂はもちろん木造建築ですが、近代的な消火設備、鉄筋や、LED照明などを上手く組み合わせていることでしょう。一方で昔ながらの趣を醸し出す。興福寺は、そのバランスが実に素晴らしいと思います。

 ところで、中金堂のすぐ隣に国宝館があります。阿修羅の人気は相変わらず絶大です。私が中金堂へ行った際も、国宝館開門前の時間でしたが、既に観光バスが何台も止まっており、多くの人が待たれていました。実は中金堂にも阿修羅のファンがおられました。中金堂に阿修羅が祀られていると勘違いされたらしいのですが、このポスターが原因らしいです。どうでしょうか。中金堂の落慶法要のポスターですが、阿修羅が中金堂に祀られていると思ってしまう人いるのではないでしょうか。

 

画像の説明:
画像左又は下 興福寺中金堂 工事中(2018年6月)
画像右又は上 興福寺中金堂落慶法要のポスター

(追記)最近仏像界はまたまた盛り上がっています。そのけん引役は、今回話題にした阿修羅と東寺のイケメン帝釈天です。東寺帝釈天は、今年、東京国立博物館で特別展示され、しかも、撮影可とのことで多くの仏像ガールが押しかけました。次回は、帝釈天を取り上げたいと思います。

2019年08月04日