正福寺地蔵堂(東京都東村山市)
正福寺は、北条時宗が1278年に開いたと伝えられる臨済宗の寺です。
正福寺地蔵堂は、昭和9年改修の際発見された墨書銘により、室町時代の1407年の建立とわかりました。それでも、年代が明らかな関東禅宗仏殿の最古例です(*1)。東京都内で、唯一の国宝建築物になっています。
<画像の説明>正福寺地蔵堂
正福寺地蔵堂の特徴を列挙しますと、桁行3間四方、裳階付、入母屋作り、杮葺き(こけらぶき)、裳階銅板葺きとなります。添付の画像を見て戴くとお解り戴けると思いますが、屋根は、強い軒反りを持ちます。また、禅宗様の特徴の詰組(斗栱を柱間にも配置する)、弓連子(或いは波連子)の連子窓や上部が花頭曲線の花頭窓を持ちます。
<画像の説明>画像左または下:正福寺地蔵堂 詰組(柱間の斗供に注目してください)
画像右または上:正福寺地蔵堂 花頭窓と連子窓
直接見ることはできませんが、現地の説明書きによりますと、内部は土間床、鏡天井となっています。禅宗様として多い四半敷(床石を45度傾けて敷く)の石畳では無いようです。鏡天井は、文字通り天井板を鏡の様に平面に並べたシンプルな天井ですが、禅宗様に多いタイプです。
尚、円覚寺舎利殿は、13世紀に建てられましたが、1563年の大火で焼失し、現在のものは鎌倉尼五山の一つ大平寺の仏殿を移築したものです。正福寺地蔵堂に似ていることから、同時代に建立されたものとされます。禅宗様建築の代表的遺構として、大変ポピュラーです(*2)。
正福寺地蔵堂は、知名度という点で残念ながら円覚寺舎利殿には及びませんが、文化財的な意義という点で、円覚寺舎利殿に勝ります。
(*1)鎌倉の覚園寺に現存する薬師堂は、典型的な禅宗様の建築物です。1354年、足利尊氏により再建されました。現存する薬師堂は足利尊氏再興時の部材を残しています(足利尊氏の自筆の銘が天井板に残ります)が、江戸時代に改築に近い大修理を受けています。
(*2)私の高校時代の日本史の教科書には鎌倉時代の典型的な仏閣として掲載されていました。