鑁阿寺(栃木県足利市)
鑁阿寺(ばんなじ)は、足利氏の居館跡と伝えられる真言宗の寺院で、寺伝によると足利氏2代足利義兼(源義家の曾孫に当たる)により開創されたとのことです。写真の本堂は、1299年に建立されました。2013年に重要文化財から国宝に昇格しました。
<画像の説明>鑁阿寺本堂
建築様式として、基本は和様ですが、禅宗様を取り入れたいわゆる折衷様建築の初期のもので建築史的にも重要です。禅宗様は、中国宋から伝わり、鎌倉時代に始まった建築様式で、折衷様は、主に室町時代に多くなる様式です。
斗供(屋根下の組み物)が、柱の上だけではなく、柱と柱の間にもある等は、それまでの和様建築にはありませんでしたが、垂木は、禅宗様の扇垂木ではなく、平行垂木になっています。
<画像の説明>画像1:鑁阿寺本堂斗供 柱間の斗供に注意 画像2:鑁阿寺本堂の平行垂木
鎌倉の円覚寺舎利殿等が、室町時代の建築(私の高校時代の教科書には鎌倉時代の建築と記載されていました)とされるようになった今日では、鑁阿寺本堂が、関東地方における鎌倉時代の貴重な建築物であることは間違いありません。鑁阿寺境内には、国指定の重要文化財の鐘楼、経堂を始め、多数の県指定級の文化財が残ります。また、密教系の寺院らしく多宝塔も残ります。
<画像の説明>画像1:鑁阿寺経堂 画像2:鑁阿寺鐘楼
*建築様式においてかつては、「和様」の他は「唐様」「天竺様」という言い方がありました。「唐様」という言葉は、今もネットでも結構見られます。「唐様」=「禅宗様」とご理解ください。一方、旧来の「天竺様」という言い方は今は殆どなくなりました。「大仏様」と表現されています。