宝城坊日向薬師(神奈川県伊勢原市)

 宝城坊日向薬師(ほうじょうぼう ひなたやくし)は、本堂の改修工事が、平成22年から6年間続き、平成28年11月に落慶式が行われました。4月15日は、年に一日の御開帳の日(正月には別途ご開帳されているとのことです)で、当日は大変混雑しています。

 本堂は、茅葺きで国内最大級です。落慶式の際の新聞報道によると、茅の重量は、約50トン、大半の木材が鎌倉・室町時代のもので、現在も使用可能だったとのことです。写真の通り、朱色に黒色の模様が施されていますが、これは、江戸時代の顔料を再現して塗り直したものです。

 

<画像説明>宝城坊日向薬師本堂

 

 宝物殿に安置されている本尊の丈六薬師如来三尊(丈六と説明書きがありますが、周尺の丈六で、普通の丈六より少し小さいです)は、鉈彫りにより仕上げられています。鉈彫りは、仕上げを丸鑿で削り、ごつごつ感を際立させています。一瞬、製作途中かとも思えますが、鉈彫りが、東日本に集中しており地域性が明確(奈良、京都を始め西日本にはありません)で、一様に顔以外に鉈彫りがみられ、しかも11-12世紀に集中している点から彫像の一形式とみられます。本尊薬師三尊の脇侍の日光菩薩、月光菩薩も鉈彫りにより仕上げられています。

 

 宝物殿の中央の壇上には本尊の薬師如来三尊像、十二神将、そして四天王が安置されています。多聞天は、右手に宝塔を持ち、右足に体の重心を置いた力強い作りです。鎌倉時代のおそらく慶派の技術を引く仏師の作と思います。向かって右側の壇上には、鎌倉時代の丈六薬師如来三尊像(こちらは、正真正銘の丈六)、左側の壇上には、鎌倉時代の阿弥陀如来坐像が祀られます。いずれも、重要文化財です。

 

 宝物殿の中は、いずれも写真撮影禁止です。画像は、宝城坊本堂が改築中の、2015年に金沢文庫博物館で日向薬師特別展が開催された際の博物館の外に出されたポスターの写真です。鉈彫りの跡がご覧戴けると思います。

 

<画像の説明>日向薬師薬師三尊像日光菩薩立像のポスター

 

 *新聞の説明記事には、日向薬師が日本三大薬師の一つとの紹介がありました。こういう三大××という表現は、良く使われますが、この場合三大薬師は、どこの薬師を指すのでしょうか。薬師寺、新薬師寺等薬師を寺名に冠したお寺も他にありますし、薬師如来の祀られた寺院は一杯あります。日本三大薬師と言わなくても、日向薬師の良さは十分伝えられると思います。

 

 

2017年04月16日