藤里毘沙門天(岩手県奥州市)

 藤里毘沙門天は、地天の上に毘沙門天がのる兜跋(とばつ)形式の毘沙門天です。説明書きによると、トチノ木による一木造で内刳は施していません。総高232㎝、花巻の成島毘沙門天の半分の高さです。11世紀当地の作像と想定されています。 毘沙門天の安置された施設の前の説明書きには、本像は、成島毘沙門天同様やはり、坂上田村麻呂の伝説が残っていたとされます。

 

<画像の説明>画像1 兜跋毘沙門天(重要文化財)一木造 平安時代(11世紀) 鉈彫り

       画像2通常の毘沙門天(県指定文化財)寄木造 鎌倉時代 鉈彫り

 

 この像は、顔を除いて、鉈彫りがみられます。鉈彫りは、丸鑿の縞模様を残した仕上げを施した像をいう。鉈彫りは、中央には見られず分布は東日本に限られます。当寺のパンフレットによると、分布が限られるうえ、作成の時代も平安末期に集中しており、その作例が相当数見られることを考えれば、完成前の途中段階の作品ではなく、一つの造像技法と考える方が自然とのことです。 鉈彫りに関しは、私は、当寺の毘沙門天以外では、神奈川県宝城坊日向薬師坐像、岩手県天台寺聖観音菩薩立像を見たことがあります。もちろん私が知らないだけで、その他にもそれなりにあると思います。

 藤里毘沙門天は、元は智福寺というお寺に祀られていたようですが、該当の寺院も今はなく、伝世はわかりません。 当寺は、交通の便が悪いので、運転が可能なら、水沢江刺でレンタカーを借りるのが良いと思います。レンタカーであれば、1日で上記の成島毘沙門天を始め、いくつかの寺院を回ることができます。

 

2017年04月22日