大足宝頂山
大足宝頂山は、今の行政区画では、重慶市大足区になります。宝頂山は仏教の聖地として有名で、‘上朝峨毘、下朝宝頂’と言われています。大足宝頂山と大足北山を合わせて国家A5級史跡に指定されています。なお、中国では、「朝」は、「参詣する」の意味を持ちます。
<画像の説明>釈迦三尊像 手前観音菩薩像、奥釈迦如来像
<画像の説明>画像1:釈迦如来涅槃像(工事中) 画像2:飛天
<画像の説明>大足宝頂山千手観音像
ここの千手観音は本当に千手あります。中心部が体で、周囲がすべて手です。中心部は宋時代、そのほかはかなり修復が入っています。
因みに日本で実際に千手ある千手観音は、何体かあるようですが、寿宝寺、唐招提寺、大阪の葛井寺の3体が特に有名です。一般の千手観音は、1腕を25手で数えます。
<画像の説明>画像1:15号龕 父母恩重経の題記 画像2:17号龕 大方便仏報恩経題記
なお、現地の題記によると、宝頂山の作像は、父母恩重経(ぶもおんじゅうぎょう)、大方便仏報恩経(だいほうべんぶつほうおんきょう)が、根拠になっているとのことです。確かに、孝行する子供の姿が描かれたところもあります。この二つの経は、偽経(中国で創作された経)(*)とされています。例えば、父母恩重経は、儒教の父母への孝の重要性に基づいたもので、元来の仏教の教義とは関係ありません。宋以降中国では、儒教と仏教の混交に基づいた作像が多くみられます。さすが、中国です。お経にも偽物がありました。
(*)偽経に関しては、船山徹氏の「仏典はどう漢訳されたのか」を参照させて戴きました。