新疆の石窟
新疆ウイグル自治区(歴史書では東トルキスタンと表現されることが多いです)には、数々の仏教遺跡が残ります。庫車(クチャ)や吐魯蕃(トルファン)の石窟は、割合オープンでいつでも訪問できます。私たちシロートも訪れることができますので、下記に写真で紹介させて戴きます。
シルクロード南道地域にも跡はたくさんありますが、残念ながら見ることのできる石窟は殆どありません。砂漠の中に埋もれてしまっていますし、発見されても、環境的な影響か遺物があまり残っていないことも要因でしょうが、民族問題や原爆実験の影響がある地域もあり、近づくことすらままなりません。
有名なダンダンウイリク遺跡やラワク遺跡等は、20世紀初頭に、主にスタインによって発見されました。ダンダンウイリク遺跡は、近年新疆文物局によって再調査が行われましたが、スタイン(*)の残した写真に残された塑像は、殆どが紛失したか、或いは破壊されたかで、無残な姿になってしまいました。
(*)スタイン(1862-1943)イギリスの中央アジア探検家。ハンガリー生まれのイギリス人。シルクロード南道の遺跡を探索し、様々な古文書をや遺跡を発見した。また、タリム盆地全域の地図を作製した。
ラワク遺跡は、最近中国政府によって地上のみは近年公開されましたが、地下の遺跡は、スタインが埋め戻して以来未公開です。
ホータンの40㎞北方にあるフガイウライク仏寺遺跡は、1982年に発見されました。この仏寺遺跡では、仏足の間に座って合掌礼拝している女性の壁画が見つかっています。私は、この壁画の復元図を見たことがありますが、仏足の女性は地天の基本になったものだと考えています。
クチャ地域には、有名なキジル石窟をはじめ、キジルガハ石窟ほか、クムトラ石窟やシムシム石窟があります。また、トルファン地域には、ベゼクリク石窟があります。
<画像の説明>キジル石窟遠景
<画像の説明>画像1:キジル石窟と鳩摩羅什のオブジェ 画像2:鳩摩羅什オブジェ拡大図。
鳩摩羅什は、当地の生まれ。南北朝時代の訳経僧で、多くの仏典の漢訳を行いました。
<画像の説明>クムトラ石窟 15,16,17窟は見学可能。その他一部石窟は、予約すれば見学可能。最近発見された新窟は不可。クチャの石窟群では、主に上座部仏教系の遺跡が多いが、新窟は、大乗仏教系の遺跡と言います。(新窟は、現状公開されていません。)
<画像の説明>キジルガハ石窟群遠景 。
工事終了後は、観光客が大量に訪れるようになると思われます。
<画像の説明>画像1:キジルガハ石窟群近景 画像2:キジルガハ烽煙台(狼煙(のろし)台)
キジルガハ狼煙台は、キジルガハ石窟に近く、観光ルートにも入っていることも多い。因みに’のろし’には狼(オオカミ)の油を使ったことから狼煙(のろし)の漢字が当てられていそうです。
<画像の説明>シムシム石窟。 シムシム石窟は、道が無く、オフロード(水の枯れた川筋)を1時間以上走り到着できます。雨が降ると行くことができなくなりますし、一般のバスでは行けないので、観光ルートからは外れています。電気が通じていない中、管理人が1名常駐しています(太陽光発電用のパネルがあります)。見学には事前予約が必要です。石窟内部には、上座部仏教系の壁画が広がります。
<画像の説明>ベゼクリク千仏洞 トルファン近郊にあります。当石窟は、5-6世紀麴氏高昌国の時代から始まりました。唐時代にはある程度の規模を備えていました。内部の壁画は、20世紀初めころ、ドイツ隊を始め多くが探検隊よって、持ち去られたため、むごい状況となっています。