大足北山(重慶市)
大足北山石窟は、今の行政区画では、重慶市大足区(*)に位置します。大足宝頂山と大足北山を合わせて、大足石窟として、国家A5級史跡に指定されています。大足の町の中心から比較的近いところにあります。 大足北山は、9世紀から12世紀頃の作像ですが、宋代の作像が多く、細かいところまで手が行き届き、精美な作品が多いです。造像数は5千余あるそうです。最勝王経や孔雀明王経等経変に基づいて作像されたものが多いです。
<画像の説明>大足北山 孔雀明王経窟(孔雀明王経に基づく作像です。)
<画像の説明>大足北山 釈迦如来三尊像(最勝王経に基づく作像と考えられます。)
第5窟の毘沙門天立像は、晩唐(**)の作品です。かなり大きな窟で、430㎝(高さ)×286㎝(幅)×176㎝(奥行)の大きさです。この窟の造像は、毘沙門儀軌に基づき、毘沙門天像を中心に、妻の吉祥天、第2子独善、眷属(家来)等が彫刻されています。 毘沙門天像は、金鎖甲をまとい、胸当と獅噛を持ち、目が正面では無く宝塔側を睨んでおり、東寺像を思い起こします。
<画像の説明>大足北山 毘沙門天立像 (毘沙門儀軌に基づく作像と考えられます。)
➡詳細は、本編「1.2四川の毘沙門天の変遷」をご覧ください。
➡東寺像は、本編「2.毘沙門天の歴史」をご覧ください。
➡大足宝頂山はこちらをご覧ください。
<画像の説明>大足北山 水月観音坐像
(*)重慶市は従来四川省の一部でしたが、四川省の人口が一億人を超したため、1997年に独立して中国で4番目の直轄市となりました。大足地区は、2011年には、大足区に改編されました。
(**)この窟の造像碑によると、892年から894年の造像です。